句集 残 響
四六判/上製/本文236頁
装丁=高林昭太
発行日:2014/3/3
定価:2800円+税
ISBN978-4-88032-414-2
星野高士著
星野高士(ほしの・たかし)プロフィール
昭和27年(1952)8月17日、神奈川県鎌倉市生まれ。十代より祖母・星野立子に師事して作句、笹子会に拠る。59年、立子逝去後、「玉藻」を後継した母・星野椿を補佐し、同年3月より副主宰兼編集長。平成26年6月、主宰就任予定。
句集に『破魔矢』(昭和60年、牧羊社)、『谷戸』(平成9年、角川書店)、『無尽蔵』(平成18年、角川書店)、『顔』(平成22年、角川学芸出版)、ほかに『美・色香』(平成9年、飯塚書店)、『星野立子』(平成10年、蝸牛社)。
「ホトトギス」同人。鎌倉虚子立子記念館館長。日本文藝家協会会員。日本伝統俳句協会会員。
オビ (表のオビ文)
自らの内部に鋭敏なる批評家を内在させた知性と感性の俳人、星野高士の『顔』以後四年間の収穫を収める第五句集。
『荀子』に「君子は響の如し」の詩句があるが、本書は人の世に「存問の心」を響かせる。〈一句一句が残響になれ〉との祈念を籠めた伝統派の旗手の絶唱は、永く人々の心を領することになろう。
抄出句(Ⅰ章から「冬の闇」、Ⅱ章から「絵踏」「海亀」抄出 )
Ⅰ
「冬の闇」
草の実にありし日向を奪ふ風
途中から中仙道や走り蕎麦
物乞ひの覗いて去りし十夜寺
書き出しの一字を迷ふ夜寒かな
校門に秋冷の幅ありにけり
雨の日の一元論や落花生
深秋の飴細工とは見てるもの
少しだけ放つ光や枯尾花
古書店の入口狭き冬の町
二の酉の夜空に星の混んでをり
分厚さを均してをりぬ冬の闇
Ⅱ
「絵踏」
立春やちらほらと雪そして雨
バレンタインデー止り木に誰も居ず
黒髪を潮の香包む絵踏かな
薄氷のやゝ動き初む音響く
「海亀」
夏めくや鯉の片寄る法の池
大空に風は届かず吹流し
初夏やペットボトルの水の揺れ
海亀に一粒づつの砂の息
「あとがき」より(抜粋)
いよいよ「玉藻」が一千号になり、その歴史ある俳誌の主宰になる日が近づいた。
何かしなければ、何か記念にと思いながらこの句集を出版することにした。
八百号の時に『谷戸』を、創刊八十周年の時に『顔』を出したが、『顔』以降のこの四年間の俳句はどれもこれも自分としては思い入れのあるもの、拘りのあるものであった。
(中略)
書名はと何回か問われている内に時間が経ってしまい、もう時間切れというところで冷静に考え、『残響』とした。
今までの題と違って少し硬いが、この句集の中の一句一句が残響になればとの願いでもある。
(後略)