高円寺へ
四六判上製カバー装
発行日:2021/10/22
本文270頁
装幀:高林昭太
定価:2500円+税
ISBN978-4-88032-467-8
後藤みな子著
後藤みな子(ごとう・みなこ)プロフィール
昭和11年、長崎生まれ。活水女子短大英文科卒。上京後、出版社勤務のかたわら同人誌「層」に参加、作品を発表。1971年、被爆体験から抜け出せない人々の姿を描いた「刻を曳く」で第8回文藝賞受賞。30年を超える沈黙ののち、家族の〈戦後〉に向き合った『樹滴』を刊行、大きな反響を呼ぶ。
オビ
昭和40年代、東京・高円寺は、
戦争の記憶を留めつつ〈文学〉の熱気に包まれていた。
新聞記者の夫と別居し、高円寺で一人暮らしを始めた朝子。
足繁く通うようになった路地裏のバー「ボア」を切り盛りするゆきさん、出入りする有名無名の作家たちとの出会いを通じて、朝子は小説を書くことに希望を見出すが、直面したのは封印していた母の記憶だ った。
長崎への原爆投下で息子を失い、精神を病んだ母。何が母を変えたのか、そして〈私〉は何を書くべきか。
大きな反響を呼んだ前作『樹滴』に続く戦争=原爆で壊された家族の再生の物語。
あとがき(抄)
東京から「小倉」へ移り住んで数年間、私は「小倉」が浦上の前の原爆投下予定地であることを知らなかった。しばらく文学から離れたいと思って小倉へ来た。今まで書いた小説のテーマは浦上原爆後の私の家族だった。
「小倉」が原爆投下予定地と知ったときは強い衝撃を受けた。
長い空白の後、再び小説を書き始めたのは「小倉」という土地に住んだことと無縁ではないと思う。