垂直 生と死のあわいで
四六判上製カバー装
発行日:2019/9/20
本文278頁
装丁:高林昭太
定価:2700円+税
ISBN978-4-88032-454-8
川上義則著
川上義則(かわかみ・よしのり)プロフィール
1944(昭和19)年、福岡県門司市(現北九州市)生まれ。福岡市在住。早稲田大学卒。 元朝日新聞社会部編集委員。元山口大学非常勤講師。元九州女子大学非常勤講師。
オビ(表)
九州・福岡発、
元新聞記者の
林住期の思索
文学・思想・歴史の〈知〉を探照灯として、人間、世界、文明の諸問題に相渉る、〈燎原の魂〉の気圏から発せられた珠玉の49篇。石牟礼道子、谷川雁、上野英信、渡辺京二らの系譜にも繫がる、俳誌「空」連載の慧眼の社会批評。
目次
生老病死と向きあうための49のヒント
*俳誌「空(そら)」(柴田佐知子主宰、2003年3月創刊、福岡市)に2005年~2019
年に連載された73篇から著者が49篇を精選し加筆修正した(以下は標題一覧)
森に降る時間/逝く春/遠い視線/幻想紀行/入院記/月/忘却の河/聴く力/新しい人/興亡/姥捨て子殺し/まなざし/垂直/神話/あなたは神なのか/失楽園/現在地岐路/臨床/無用の用/無事有事/ホモ・エコノミクス/廃墟/死者と生きる/雪/「不在」の重み/自助共助/いやな感じ/胡蝶の夢/言葉/末期の眼/相待つ/一(いち)/フォーム/供養/植物の夢、人間の夢/新貧乏物語/混沌の海から/沈黙/ライフ・サイクル/犬心人心/フィードバック/やってみなければ……/影/他界幻想/スイッチ・オン/共感力/掌中の珠/忘れもの
あとがき
俳誌「空」で、本書収録分を含めエッセイの連載を始めて十五年になるが、始めるにあたって二つの幸運に恵まれた。一つは、表現上、制約の少ないエッセイというスタイルを与えられたこと。もう一つは、スタートした二〇〇五年は私が新聞社を定年退職した翌年で、気持を切り替えて私自身の老後と向き合う必要を強く感じていた時期だったことだ。
記者のころは、データ至上主義という報道の特性から、ともすれば事象、事案の表層を追うことに終わりがちで、飽き足らない気持を味わうことも少なくなかった、しかし、新しい取り組みとなったエッセイは、私の老後と、「書く」ということに、それまでとは異なる視座を開いてくれた。取りあげるテーマを、私自身の生き方や思いに引きつけて表現する、言わば、貧しいながら想像力を働かせたり、データを自由に組み換えて対象を異化することで、コトの本質に迫ってみたいという努力目標が生まれたのだ。
これが私の手に余る仕事であることは言うまでもないが、記事の内容はともかくとして、執筆は楽しく、しんどく、そして充実した時間だった。執筆にあたって心がけたのは、できるかぎりテーマを、より普遍的、本質的な位相の中に置いてみることだった。そして、世界も自然も人間もどんどん修羅の相を深めている成り行きを思い、だからこそ逆に、不可解で奥深さを感じさせるそれらの中に希望の幻影なりとも見出したいと努めた。
(後略)