句集 青花帖
四六判仮フランス装
著者挿画
発行日:2018/11/26
本文150頁
装丁:高林昭太
定価:2500円+税
ISBN978-4-88032-448-7
橋本 薫
橋本 薫(はしもと・かおる)プロフィール
1949年生まれ。須田菁華に師事。陶工。
オビ(表)
雪原の真清水
北陸は加賀市の山里に工房を構える陶芸家、橋本薫さんの俳句に出合うたび、私のこころに浮かび上る言葉。
またとない同志であった陶芸家のつれ合いを看とられ、母上を天上に還された。
孤愁を楯に、悲愁を一行の詩に飛翔させる金剛力をこの人は蔵していた。
はれやかにピアノを弾き、悠々と歌仙を捌く。この国にめったに居ない本物の読書人。橋本薫さんの長年にわたる句友であること、このことを誇りとして、私はずっと生きてきた。そう思う。 ――黒田杏子
オビ(裏)「後書」より
磁器の器を作っているので、日中は主に成形作業をし、夜に絵付けをしている。時間のかかる仕事だが、描くことは楽しく、天職だと思っている。
冷たく滑らかな磁肌に透く青の静けさ。
絵画における青の歴史がラピスラズリとアズライトの歴史だとするなら、焼き物の青はコバルトの歴史といえるだろう。中東からもたらされた回青が中国の元の時代に染付の技法として完成された。私は自由奔放な明末の古染付や祥瑞などが特に好きで、眺めていると藍一色の世界に不思議な郷愁をおぼえる。それは透明な釉薬の下に描かれた、永遠に触れることのできない青の世界だ。釉下に描く染付のことを中国では青花といっていたそうなので、集名はそこから。
青は天使の服の色、壺に閉じ込めても、直に触れることのできない、はるかな憧れの色である。