句集 星 籠(せいろ)
四六判上製・カバー装
発行日:2016/10/28
本文210頁
装丁=高林昭太
定価:3000円+税
ISBN978-4-88032-435-7
千葉 信子著
千葉 信子(ちば・のぶこ)プロフィール
俳人。俳句協会会員、俳人協会会員。
1930年、東京生まれ。1953年、「草笛」入会。草笛新人賞受賞。テレビ番組「俳句」に1年間、法師浜桜白と出演(ゲスト出演)。この時期、加藤楸邨に師事。1955年、「草笛」同人。1993年、「青樹」入会。1997年、「青樹」同人(2008年、「青樹」廃刊)。句集に、『縦の目』(2005年)。
オビ(表)
脈々と伝わることばのいのち
ゆめのなかにも螢のきてをらず
螢の死だれも返事をしてくれぬ
牡丹を怖がらなくてよいと剪る
欠けさうな音して開く寒牡丹
「物おもへば沢のほたるもわが身よりあくがれいづる魂かとぞ見る」と歌ったのは和泉式
部。螢を最も効果的な舞台の小道具に使ったのは紫式部。『源氏物語』の「螢」の巻にあ
つかわれた螢火の美しさは圧巻だが、妖しい美の幻影をただよわす千葉さんの螢の句も魅
力的だ。「鮮やかに美しいものは実に静かである」という川端康成氏のことばが自然に想い出されるのは牡丹の句。句集『星籠』からは、ことばのいのちが脈々と伝わってくる。
瀬戸内寂聴
オビ(裏)
ひかりを掬う十七音
サングラス癌といふ字の山抱へ
ふらここや空の階段後ろより
影はみな主をもてり冬座敷
蘂の字の心の火照り寒明くる
晩年や石榴は口を開けしまま
蟻地獄深山は雲を吞みこめり
ほととぎす灰のなかには火の遺骨
草は根を真つ逆さまに原爆忌
日と月のあはひに咲けり茄子の花
曼珠沙華ぞろりと影をへこませる
目次
作品
2011年~2016年
随想
「草笛」のこと
螢
モンゴルの星
ひなさんの話
解説
「ことばの銀河――詩と永遠」 齋藤愼爾
解説(抜粋)
「ことばの銀河――詩と永遠」 齋藤愼爾
ロマン派の詩人ノヴァーリスに「見えるものは見えないものにさわっている。聞こえるものは、聞こえないものにさわっている。それならば、考えられるものは、考えられないものにさわっているはずだ」(「断章」)がある。大岡信氏がこれを敷衍して「有限なるものにさわっていることは、じかに無限なものにさわっていることだ」と記述した。千葉信子俳句の無限の深淵性を解読する際に有効な手掛かりとなるのではないか。