対話 都市とエロス

A5変形/上製/本文174頁
装丁=谷川晃一
発行日:1986/11/10
定価:1400円+税

吉本隆明VS出口裕弘

著者プロフィール




吉本隆明
(撮影:高梨豊)




出口裕弘
(撮影:内山英明)

吉本隆明
1924年、東京・月島生まれ。東京工業大学電気化学科卒業。詩人・文芸評論家・思想家。2012年3月、肺炎のため死去(享年87)。自家版詩集『固有時との対話』『転位のための十篇』で詩人として出発する一方、文学者の戦争責任論、転向論などで論壇、思想界に登場。以後、言語論、思想論、宗教論など人間の全幻想領域への原理的、人類史的な解明に向かって単独で思索を拡げ、思想界に大きな影響を与える。
主な著作に『言語にとって美とはなにか』『共同幻想論』『初期ノート』『最後の親鸞』『初期歌謡論』『悲劇の解読』『心的現象論序説』『心的現象論本論』『マス・イメージ論』『ハイ・イメージ論』『母型論』『吉本隆明全詩集』など。深夜叢書社からは『「反核」異論』、〈インタビュー集成全3巻〉ほか刊行。

出口裕弘
1928年、東京・日暮里生まれ。東京大学仏文科卒業。フランス文学者・小説家・エッセイスト、元一橋大学教授。在学中に澁澤龍彦と知己を得る。20代後半から小説を書き始める。一橋大学経済学部教授に就任後、長篇小説「京子変幻」を発表し注目される。
著書に『ボードレール』『行為と夢』『楕円の眼』『天使扼殺者』『風の航跡』『 越境者の祭り』『ロートレアモンのパリ』『街の果て』『私設・東京オペラ』『ろまねすく』『古典の愛とエロス』『綺譚庭園 澁澤竜彦のいる風景』『東京譚』『澁澤龍彦の手紙』『帝政パリと詩人たち』『三島由紀夫・昭和の迷宮』『坂口安吾百歳の異端児』 ほか。
訳書に、ブランショ『文学空間』、デュカ『エロティシズムの歴史』、ユイスマン『大伽藍』、バタイユの『有罪者 無神学大全』『内的体験 無神学大全』、シオランの『歴史とユートピア』『生誕の災厄』『告白と呪詛』、ペロー『長ぐつをはいたねこ』など多数。
深夜叢書社からは1985年に出口裕弘全短編集『街の果て』刊行。

オビ

〈世界〉と〈都市〉の急激な変動をどう捉えるか。思想としてのエロスはその究極の像において、権力を無化するところにとうたつできるか――バタイユ、ブランショ、フーコー、シオランなど欧米の代表的な文学者・思想家、そして谷崎潤一郎、三島由紀夫らの思想的営為から、新風営法に揺れる新宿歌舞伎町の路上まで、さまざまに変動する現代文化・思想の位相を縦横に論じ、全的な〈世界把握〉の可能性と方法を重層的に且つ真摯に探った対話。 【付録=吉本撮影による「下町界隈」写真23点掲載】

カバー裏のオビ

吉本隆明=これほど速度が自然だと感じながら、でも言いたいこと聞きたいことが尽せた対談はなかった。じぶんも人さえ択べばぎくしゃくした異和感とか対立感とかなしに、他者の話を聞き、じぶんの言うべきことは尽すということができるかも知れないぞという自信のようなものが得られた気が、しきりにした。

出口裕弘=二人とも、東京は東京でも、どう考えても高度に知的とはいえそうもない環境に育っている。そこから来る親近感が、終始私にはあった。吉本さんは言葉をやりとりするに当って、よけいな気をまわさずにすむ人である。まっすぐに尋ね、まっすぐに答えればいい。そういう人は、いま、きわめて数少ないのではなかろうか。

目次
出自としての下町/谷崎型と荷風型/シオランの衝撃/三島由紀夫の不毛性/老いということ/フーコーの『言葉と物』
シオランとパリ/森有正のパリ/思想領域におけるフランス/バタイユの独創性/ 近親姦の禁忌/フーコーの最後のモチーフ/歌舞伎町ののぞき部屋/意味の重さ、感覚の重さ/時間概念の変換

【付録「週刊読書人」1981年1月12日号、「『難かしい時代』のくぐり方」】
ブランショとバタイユ/『旅愁』と『帰路』の間/難かしい時代のくぐり方/小林秀雄の批評

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