石牟礼道子の形成

四六判/並製/本文174頁
装丁=高林昭太
発行日:2010/9/10
定価:1800円+税
ISBN978-4-88032-305-3

新藤 謙著

新藤謙(しんどう・けん)プロフィール

1927年、千葉県生まれ。評論家。主な著作に、『日本人の感性―うたについて(1979年、三一書房)、『野の思想家真壁仁』(1987年、れんが書房新社)、『女性史としての自伝』(1988年、ミネルヴァ書房、シリーズ「女いま生きる」) 、『きだみのる―放浪のエピキュリアン』(1988年、リブロポート) 、『精神の原郷―自伝の少年体験』(1988年、れんが書房新社)、『ぼくは悪人―少年鶴見俊輔』(1994年、東方出版)、『サザエさんとその時代』(1996年、晩声社)、『美空ひばりとニッポン人』(1998年、晩聲社)、『秋山清の詩と思想』(2008年、土曜美術社出版販売)、ほか多数。

目次

一、文学開眼
二、企業犯罪と日本の近代-『苦海浄土
三、自然と人生
  1 自然と 「人界」-『椿の海の記』
  2 自然との交感-『あやとりの記』
四、精霊たちの寓話
  1 『おえん遊行』
  2 命のはじまり-『水はみどろの宮』
  3 現代の悶え神-『常世の樹』
  4 耳と音の蘇生-『天湖』
五、人民の歴史
  1 『十六夜橋』
  2 『春の城』
  3 人民の歴史-『西南役伝説』
六、石牟礼道子の詩の位置

書評(室伏志畔氏のブログから一部抜粋)

「〈語りの呪術師〉の形成」について室伏志畔
熊襲の地が谷川雁と石牟礼道子を生み出したことはやはり何ごとかなのだ。「熊襲の公達」よろしく男は六〇年代に炭鉱闘争の現場から情況言語を支配したなら、女は七〇年代、呪術師よろしく水俣の毒を紡いで見せた。それら言説はこの半世紀に雲散霧消したかに見えるが、今も情況の深部に揺曳している。本書はその石牟礼道子の形成を、新藤謙がその著作を辿り直し、その意味を鮮明にするものと云えよう。
(中略)
天草に生を受け水俣に育った石牟礼道子の形成を確かめようと、進藤謙はその著作深く降りて行く。それは『ぼくは悪人』を書き、少年・鶴見俊輔に悪人を見出し、それを手放すことなく、その意味を深める中に後年の哲学思想家を見た新藤謙にとって、知的先端に鶴見俊輔を位置づける論議は、所詮、遊びにしか見えなかったことによろう。
(後略)
* 同ブログ http://blog.goo.ne.jp/ekkyou41/e/65e585b02b025e4261c876c58c467c1f
*深夜叢書社から室伏氏の著書は、『筑豊の黙示―〈非知〉への凝視』(2009年)を刊行。

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