風の図譜

風の図譜

四六判上製カバー装
発行日:2019/10/30
本文138頁
装丁:高林昭太
定価:2500円+税
ISBN978-4-88032-456-2

原 満三寿著

原 満三寿(はら・まさじ)プロフィール

1940年、北海道夕張生まれ。埼玉県川口市在住。句集・詩集・論考ほか著作多数。
【俳句関係】「海程」「炎帝」「ゴリラ」「DA句会」を経て、無所属。
  句集=『日本塵』(青娥書房)、『流体めぐり』『ひとりのデュオ』
     『いちまいの皮膚のいろはに』『風の象』(以上、深夜叢書社)
  俳論=『いまどきの俳句』(沖積舎)
【詩関係】第二次「あいなめ」「騒」を経て、無所属。
  詩集=『魚族の前に』(蒼龍社)
    『かわたれの彼は誰』『海馬村巡礼譚』(以上、青娥書房)
    『臭人臭木』『タンの譚の舌の嘆の潭』『水の穴』(以上、思潮社)
    『白骨を生きる』(深夜叢書社)
  未刊詩集=『続・海馬村巡礼譚』『四季の感情』
【金子光晴著作関係】
  評伝=『評伝 金子光晴』(北溟社、第2回山本健吉文学賞)
  書誌=『金子光晴』(日外アソシエーツ)
  編著=『新潮文学アルバム45 金子光晴』(新潮社)
  資料=「原満三寿蒐集 金子光晴コレクション」(神奈川近代文学館蔵)

オビ

  俳皿に三千世界の風を盛る
  春の海のたりと死人(しびと)をうらがえす

〈風〉の諸相を象った、思想する俳諧師の第6句集。
鎮魂の詩作品「追憶の俳人たち」3篇も併録。

目次

さすらう風……夭生の譜 縄文の譜
風しげる………いろいろ野譜
風ふんで………藁人の譜
風ひとり………老いの譜
風のなごり……庄内の譜 仏の譜 化外の譜
風やまず………被爆に被曝 人に生まれて
  *
詩・追憶の俳人たち〈離見の見〉
火定火宅 遠くへ(Further!) その人は

あとがき

 前句集『風の象』に次いで『風の図譜』ですからまた「風」かと思われる向きもありそうです。前の風には、風の訓義を拡げ、万物の時間や時代の〈かたち〉を仮託できればと考えたのですが、その後、「風」には、「文字」の原義があることがわかって、それならばもう少し「風」と徘徊してみようかと思ったのです。
 その原義とはこうです。
 世界最古の部首別漢字字典『説文解字』の「序」によれば、古代中国の黄帝の史官であった蒼頡という人は、鳥や獣の足跡を見て、その種別が足跡の形の違いとして表れることに気づき、初めて文字を造った。その文字は、種類に基づき物の形に似せた象形文字で、これを「文」(模様の義)と称したといいます。
 また古代中国では、「風」は鳥の飛翔で起こると考えられ、「風」は、𠘨の中が「虫」ではなく「鳥」であったそうです。 当時の鳥は、神の「ことば」の使いともされていたので、「風=文字」であるともされた。
 であるならば、意図したわけではないのですが、『風の象』とは、「風の文」ということになり、 『風の図譜』とは、「風の文字」「風のことば」ということになりそうです。

 いずれにせよ、句集は風雅や境涯、仙境とは無縁の栗本衆の所業です。佯老もいささか怪しくなってきましたが、この先も世に竿をさしながら怪しい老俳物を垂れながすことになりそうです。ご容赦を。
「追憶の俳人たち」の詩三篇は、句集の余滴としてお読みいただければ幸甚です。三人とも生前昵懇にしていただいた俳人です。 詩法は能の「離見の見」の手法に似ているかも知れません。

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