句集 (こころ)の帆 篠田悦子句集

句集 情の帆

四六判上製カバー装
本文206頁
発行日:2017年11月10日
定価:本体2800円+税
ISBN978-4-88032-442-5

篠田 悦子著

篠田 悦子(しのだ・えつこ)プロフィール

昭和5年10月、山梨県生まれ。
昭和63年、カトレア俳句会を経て「海程」入会。
平成4年、「海程」同人。
第2回海程会賞、第49回海程賞、第40回海隆賞受賞。
現代俳句協会会員。埼玉文芸家集団会員。

序に代えて                         金子兜太

栖み古りて 武州のみどり情(こころ)の帆
夏の森 一番星のため暮れる

 しっかりと自分の生活を身に付け、潔癖にからっと乾いていて、誠実に真面目にやっている篠田悦子の姿が此処にある。
長いこと野草に親しんでいる篠田は武州の木々の緑の暖かさ、奥行きの深さを感受して生きていると思う。
 人間から植物、植物から人間へと大きく往き来する「こころ」即ち情(こころ)の動きを見る思いが普通にあり、そんな篠田の情(こころ)が、九十七歳の自分にいま、柔らかく扶けになることが多い。

 ラムネ飲む常識お化け躱しながら
 紅花百貫ほどの夕日が裏口に
 濁流や逝く夏の木の間がくれ
 鮎のぼる土着のしずけさ妹たち
 会釈して御馬草(みまくさ)か匂う信濃人
 平凡とは丸いおにぎり森林浴
 葱焼ける野の匂いかな懐(ふところ)
 霾や地球に人が居なくても
 草木瓜の花胸熱く八十路なり
 人として棒立ちの汗爆心地

 ざっと取り上げて見て、改めて感心している。今更ながら嬉しく思う次第である。

あとがき

 平成二十九年は八月一日に蟋蟀が鳴き出しました。例年は八月の盆が過ぎてからですので、随分早いなあと思っていましたら玄関口の白侘助の花芽も、もう脹らんでいました。五月の異常な暑さが自然界を狂わせているのでしょうか。線状降水帯と云うものの影響か各地のゲリラ豪雨もあって、地球は明らかに異常です。
 土の匂いや田舎の匂いが好きな私は、野や山の自然の草花が大好きです。各地での社宅生活の時も、暇さえあれば野を歩き廻って居りました。
 本当は海の見える所に住みたかったのですが、夫の故郷である熊谷に家を持つことが出来、やがて埼玉山草会の存在を知り、現在も会員ですが、ご長老たちの趣味の深さには圧倒されました。この会に入ったことで私は野の草のように有りの儘に暮らしたいと強く思うようになりました。
 仲間たちとの植物探索の旅は何より楽しいものでした。自分の好きなことに仲間も得て小さな庭でも四季の野草の手入れをする日常で充分幸せでした。
 金子兜太先生の俳句講座が熊谷に生まれることを知り、優柔不断の私がすぐに申し込みましたのは、いま考えても何か大きな力に導かれたとしか思えません。熊谷に住むことになって本当に幸運を戴きました。
 歳時記も句会も吟行のことも知らず、一歩一歩知識を授かり、素人の私が飽きずに学んで来られましたのは、金子先生の魅力も然り乍ら、兜太選に対する信頼だったと思います。
 温もればはしゃぎ寒ければ萎え芹の家  兜太
 この句のような人間臭い、気取らず飾らずのざっくばらんな暮らしの句が私は好きです。こんな領域に身を置きたいと何時も思って居ります。
 もともと晩学の上に八十六歳のいまになって、句集とはと思うのですが、女学校からの七十年来の親友にさんざんお尻を叩かれて実現することになりました。改めて友情に感謝一杯です。

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