女神たち 神馬たち 少女たち

女神たち 神馬たち 少女たち

四六判上製・カバー装
カバー絵=恩地孝四郎
本文276頁
装丁=高林昭太
発行日:2016/1/15
定価:3200円+税
ISBN978-4-88032-426-5

松下 カロ著

松下 カロ(まつした・かろ)プロフィール

1954年9月、東京都生まれ。早稲田大学文学部卒業(ロシア美術専攻)。
現代俳句協会会員。
「象を見にゆく 言語としての津沢マサ子論」で、平成24年、第32回現代俳句評論賞受賞(「現代俳句」同年10月号掲載=本書に所収)。

オビ(表)

永田耕衣、中村苑子、河原枇杷男、津沢マサ子、永島靖子ら幻視者ともいうべき孤高の俳人たち─―花鳥諷詠の呪縛から解き放たれ、異界への扉を開くマイナー・ポエットの言葉をしなやかに読み解く。存在論を孕みつつ、マグリットやルソー、ベラスケスらの美的世界とも共振する十七音の宇宙を開示する、新しい俳句批評の誕生。

オビ(裏)

偏愛的俳人群像
赤尾兜子/飯島晴子/大屋達治/岡田由季/柿本多映/河原枇杷男/桑原三郎/小宮山遠/佐々木貴子/齋藤愼爾/関 悦史/宗田安正/高橋修宏/高柳重信/坪内稔典/寺山修司/津沢マサ子/豊口陽子/中村苑子/永島靖子/永田耕衣/沼尻巳津子/三橋鷹女/安井浩司/吉村毬子 ほか

目次

Ⅰ 女神たち
   内なる異端――女性句の中の鬼
   象を見にゆく――言語としての津沢マサ子論
   疑う言葉――沼尻巳津子論
   病という言葉――永島靖子論
   女神の言葉――豊口陽子論
   楕円の中の眉と毬とユリウス
Ⅱ 神馬たち
   異邦人の言葉――宗田安正論
   誰かの言葉――河原枇杷男論
   受難の言葉――小宮山遠論
   暴力としての言葉――桑原三郎論
   断念する言葉――齋藤愼爾論
   弱者の言葉――坪内稔典論
   その時の言葉――大屋達治論
   白い陶器のある言葉――高橋修宏論
   カンディンスキーのいる言葉――関悦史論
   永田耕衣的空間についての一考察――ルソーとピカソをめぐって
Ⅲ 少女たち――中村苑子遠望
   晩年の桃
   少女たち――1 少女は白鳥をなぶるのか
         2 少女は夢から覚めるのか
         3 少女は少年をなぶるのか
   百合を剪る少年
   竜のおとし子・蛹・蝶・鴉たち――中村苑子小論

書評より(毎日新聞2016年1月18日号 シリーズ「詩歌の森へ」から)

ユニークな俳句評論              文芸ジャーナリスト・酒井佐忠
 松下カロの俳句評論集『女神たち 神馬たち 少女たち』(深夜叢書社)が刊行された。書名が示す通り、これまでの殻(から)を破るユニークな著作。
(中略)
 ボーヴォワールから、石原慎太郎、馬場あき子、さらに造形作家のウォーホルまで、他分野の芸術家らと俳句作品を対照比較させて論じる幅広い視点が、評論の大きな特徴だ。「女神は自由の発信者」と説いたボーヴォワールには、豊口陽子の俳句作品を、初期慎太郎の官能的な暴力性には、桑原三郎の作品を対比させる。さらにマリリン・モンローに固執したウォーホルと、坪内稔典が愛する「河馬」との共通性を見いだす論は実に興味深い。また、『鬼の研究』で知られる馬場と、三橋鷹女、中村苑子、柿本多映ら俳人が表現する「鬼」の共通性を探る。
 取り上げられた俳人は、二十数人。松下は「私が惹かれた俳人、魅かれた句について、心に生まれてきた言葉を綴ったものです」という。永田耕衣など多くは「言葉」に執着する孤高の俳人。異界への扉を開くような言葉の世界を探求し、また、美術や文学と交響する鋭く、広い視線が刺激的だ。

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